日刀保京都府支部4月入札鑑定会
京都府立文化芸術会館にて4月支部例会として入札鑑定会が開催されました。
講師は京都府支部の林泰行先生です。
1号刀 紀州住安重
2号刀 宮本包則
3号刀 水田国重
4号刀 尾崎助隆
5号刀 山城国吉貞
鑑賞刀 古水田
鑑賞刀 正忠作(北川正忠刀匠)
林講師のレジュメを以下に上げさせて頂きます。
1号
刀 銘 紀州住安重
刃長 91.4㎝ 反り 1.3㎝ 時代 寛文頃 紀伊国 紀州石堂
南海道紀伊国 三尺超の大作を破綻無く鍛え上げた優れた技量の持ち主。
正保頃より江戸定府内二尺八寸以上帯刀禁止令にも拘わらず御三家の和歌山藩にて禁令以降に造られた長寸の新刀が
磨上げされることなく、初ぶ拵と共に今日まで伝来したことは稀有。大和守安定、備中守橘康広と三兄弟と云われる。
2号
刀 銘 原田寿賀造 藤原永壽佩刀
慶応二年春二月於平安宮本包則鍛之
刃長 73.4㎝ 反り 2.4㎝ 時代 幕末 伯耆国 横山祐包門人
天保元年(1830)生。大互の目の作風からは祐包門人を想像できないが、幕末期の新々刀鍛冶に入札していただければ作柄同然とさせていただきました。
包則の草書銘の作品は経眼この一振りのみです。(注文銘の原田寿賀造藤原永壽は因幡国鳥取藩の藩医にて牛痘接種の先駆者)
緒方洪庵門人。明治39年(1906)帝室技芸員を拝命。昭和元年(1926)97歳没。
3号
脇差(鵜の首造)銘 備中国水田住大与五国重作
刃長 45.0㎝ 反り 1.2㎝ 時代 寛永頃 備中国 水田郷の国重
大月与五郎と称す。新刀と観て荒沸の作は備中水田か薩摩に多い。
薩摩刀には芋づる式の沸が多く、また尖り刃が地に煙り込む様が観られる。
水田国重には棟焼が多く観られる。
4号
脇差 銘 尾崎長門守藤原助隆
享和二年八月日
刃長 43.8㎝ 反り 0.6㎝ 時代 江戸後期 摂津国 黒田鷹諶門人
1753(宝暦三年)生。1798(寛政十年)に長門守を受領。
本作は1802(享和二年)49歳時の作。津田助広の涛欄乱に私淑して終生この大互の目乱れの作風を貫いた。1805(文化二年)53歳没。
5号
短刀 銘 山城国藤原吉貞
刃長 28.9㎝ 反り 0.2㎝ 時代 寛永頃 山城国 三品系
一見初代丹波守吉道を彷彿とさせる出来合い。京大阪の吉道によく見られる簾刃の作品で三品派の門系をしらべてみたが伝系が判然としません。
参考刀
短刀 銘 作州住国重作(花押)
天正三年八月
刃長 23.4㎝ 時代 室町末期 美作国 水田国重
水田国重はそのほとんどが備中か稀に備前にて作刀していますが、本刀は珍しく美作国で作刀した新資料になります。
拵は竜田川図総蒔絵で目釘ねじ切は逆廻しです。鞘は極薄手の入れ子になっています。
また鑑賞刀として北川正忠刀匠による彦根城博物館所蔵、備前三郎国宗の写しが披露されました。
林泰行先生鑑定刀解説の様子。
この度も入札鑑定をお楽しみ頂き、無事例会を終える事が出来ました。
ご参加下さった京都府支部会員の皆様、誠にありがとうございました。